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資産1000万円を何年で使い切る?お金の「寿命」を延ばすコツ

フィデリティ証券

老後資金を考える際に、公的年金だけでは心もとないでしょう。多くの人は資産形成を通じて貯蓄を増やし、セカンドライフで取り崩す計画を立てるはずです。そして「人生100年時代」では取り崩せる期間(資産寿命、お金の寿命)をいかに長く延ばせるかが鍵となります。どうすれば、どのぐらい延ばせるのか、シミュレーションしてみます。

1000万円の資産を長く使い続けるためには?

1000万円の預貯金を毎月5万円ずつ取り崩して生活費などの足しにする場合、1000万円は16年8カ月(200カ月)後になくなります。その後は公的年金以外に使える十分なお金がなく、充実した生活を送りにくいかもしれません。

そうした事態を避ける手段の1つが資産運用です。投資信託などへの投資を通じてお金に働いてもらい「増やしながら使う」ことで、お金の寿命を延ばせます。

株式など値動きがある金融商品に投資する一般的な投資信託は、運用利回りが変動します。ここでは資産運用で一定の利回りを確保しつつ毎月5万円ずつ取り崩す場合に、当初保有していた1000万円の金融資産をいつまで取り崩し続けられるのか、試算します(預貯金の利回りを0%と仮定)。

試算結果は以下の通りです。

取り崩せる期間 必要な運用利回り
16年8カ月 0%
20年 1.88%
25年 3.49%
30年 4.39%
35年 4.93%
40年 5.27%

金融資産を取り崩せる期間と必要な運用利回り①(フィデリティ証券が作成)

資産運用で毎年1.88%の利回りを得られれば、毎月5万円ずつ取り崩せる期間は20年(240カ月)になります。4.39%であれば360カ月(30年)です。

取り崩した後の資産残高の推移を利回り別にグラフで見ると、以下のようになります。イメージしやすいよう、定年退職後の65歳から取り崩しを始めたと想定します。

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利回りが高いほど資産残高の減りは緩やかになり、取り崩せる期間も長くなります。また、複利効果が得られるため、15年からの5年間(3.49-1.88=1.61%)よりも35年からの5年間(5.27%-4.93%=0.34%)のほうが、必要な利回りの上乗せ幅は小さくなります。

人生100年時代を見据えてお金の寿命を延ばすのであれば、少しでも高い利回りで資産運用をすることが大切です。

バッファー資産を保有しよう

ただし、値動きがある金融商品を何十年間も同じ利回りで運用することは難しいです。市況の変化で資産価値が目減りする可能性もあります。そのため、金融資産の一部は緊急時用の資産(バッファー資産)として運用資産から切り離すと良いでしょう。平時は手を付けないお金のため、預貯金などリスクが低い安全資産が望ましいです。

バッファー資産のメリット

株式相場の大幅な下落など市場急変の際には運用資産の代わりにバッファー資産を取り崩すことで、含み損を抱えたり、運用益が目減りしたりした運用資産を売却しなくても安定的に生活費用の資金を確保できます。

以下は金融資産1000万円のうち300万円をバッファー資産とし、残り700万円を資産運用に充てるケースです。毎月5万円ずつ取り崩す場合、300万円は取り崩すお金の5年分(5万円×60カ月)に相当します。

あくまでイメージのため、実際のお金の流れや資産を保有する口座などは、皆さんの使い勝手が良い手段で管理していただければと思います。

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5年分のバッファー資産があれば、運用資産の売却・取り崩しをためらうような市場の急変時でも、少なくとも5年間は運用資産に手を付けずに生活費用の資金を確保できます。

バッファー資産のデメリット

バッファー資産のデメリットもあります。運用できる資産が少なくなることです。取り崩す金額と期間が同じであれば、運用資産が少ないほど、より高い利回りでの運用が必要になります。

バッファー資産を5年分確保した場合に必要な利回り

1000万円の資産を300万円のバッファー資産と700万円の運用資産に分け、毎月5万円ずつ30年かけて取り崩す場合を考えます。

バッファー資産として5年分(300万円÷毎月5万円=60カ月)あるため、700万円を取り崩す期間は25年です(30年のうち5年をバッファー資産、25年を運用資産の取り崩しで賄う)。700万円を25年で取り崩すために必要な利回りを計算すると、7.12%となります。

バッファー資産に手を付けずに運用資産だけで30年間を賄うためには、7.72%の利回りが必要になります。1000万円をすべて資産運用に充てる場合は、本記事の冒頭で確認したように4.39%です。

取り崩せる期間 必要な運用利回り
15年 3.49%
20年 5.96%
25年 7.12%
30年 7.72%
35年 8.06%

金融資産を取り崩せる期間と必要な運用利回り②(フィデリティ証券が作成)

7%前後の利回りを30年にもわたり確保し続けるのは、現実的には難しいかもしれません。そのため、バッファー資産をもう少し減らしたケースでシミュレーションします。

バッファー資産を3年分確保した場合に必要な利回り

毎月の取り崩し額を5万円とし、バッファー資産を3年分(5万円×36カ月=180万円)確保した場合、運用資産は820万円です。先ほどと同じように、平時は運用資産を取り崩して生活費用の資金とし、市場の急変時はバッファー資産を取り崩します。

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運用資産820万円の取り崩し期間と必要な利回りは以下の通りです。例えば、取り崩し期間を30年と想定した場合は、30年のうち3年をバッファー資産、27年を運用資産の取り崩しで賄います。

取り崩せる期間 必要な運用利回り
17年 2.66%
22年 4.72%
27年 5.77%
32年 6.35%
37年 6.70%

金融資産を取り崩せる期間と必要な運用利回り③(フィデリティ証券が作成)

毎月5万円を27年間取り崩し続けるために必要な利回りは5.77%となり、より現実的な水準に近づきました。

表には記載していませんが、バッファー資産に手を付けずに運用資産だけで30年間を賄うためには6.16%必要です。5年分のバッファー資産を確保する場合と比べて運用に充てる資金が多くなるため、必要な利回りは下がります。

市場急変時に運用資産を取り崩したくなったら

長い時間をかけて資産運用をしていると、いずれかのタイミングで市場の急変を経験するでしょう。どんどん目減りする運用資産を見て取り崩しペースを速めたり、一気に売却したくなったりするかもしれません。

しかし、株式相場などは一般的に上昇と下落を繰り返します。大きく値下がりしたとしても、その後はある程度の水準まで値を戻したり、さらに値上がりしたりすることがあります。慌てて売却すればその分だけ、市況回復による収益獲得のチャンスを十分にとらえることができなくなります。

だからこそ、市場の急変時に備えるバッファー資産が必要なのです。また、バッファー資産を確保しなくても、取り崩すペースを緩める選択肢もあるでしょう。

このあたりは個々の投資判断につながるため、ご自身の資産の状況や将来の目標などを見定めた上で、事前に運用方針を決めておくことが大切です。

まとめ

退職後に待つセカンドライフは、皆さんの想像よりもはるかに長いです。第二の人生を元気に、楽しく過ごすためにはお金にも長生きしてもらう必要があるため、ご自身の理想とするファイナンシャル・プランニングをつくった上で、実践していただければと思います。また、現預金ではなく株式(株式を含む投資信託)などで運用しておくことはインフレ時の購買力維持にもつながります。

資産運用で考えるべき運用利回りと資産配分(アセットアロケーション)の詳細は以下の記事を参考にしていただければと思います。

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