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老後(定年退職後)に必要な医療費はどのぐらい?目安を把握しよう

フィデリティ証券

この記事のポイント

  • 医療費の自己負担額は最も多い60歳代後半、90歳代前半でも年間8.3万円程度
  • 高齢者は自己負担割合が低く高額療養費制度もあり、高額な医療費負担にならない
  • 老後の健康不安を民間保険で備える前に、ぜひ公的保険制度の仕組みを確認しておこう

高齢になるほど病気にかかったり、ケガをしたりしやすくなります。それだけに、老後(定年退職後)にかかる病気やケガの治療費について、漠然とした不安を抱える人が多いようです。実際、老後(定年退職後)にどのぐらいの医療費が必要なのでしょうか。目安だけでも把握しておくと安心感につながるかもしれません。実際にデータで確認しましょう。

老後にかかる医療費は?

老後(定年退職後)には、いくらぐらい医療費がかかるのでしょうか。厚生労働省によると生涯医療費(1人の人が生涯で必要となる平均医療費の推計、令和2年度、男女計)は2700万円で、そのうち約6割(約1600万円)は65歳以上です。65歳以上でかかる医療費は男性(1496万円)よりも女性(1677万円)のほうが多いです。

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生涯医療費(令和2年度、男女計、推計値)、厚生労働省のデータを基にフィデリティ証券が作成

もちろん、医療費がこれほどかかるからといって、心配する必要はありません。全額をご自身が負担するわけではないからです。

医療費はかかるが自己負担額はそれほど高くない

たくさんの医療費がかかって心配するかもしれませんが、自己負担額で見れば、それほど高額ではありません。別のデータで確認してみましょう。

以下のグラフは厚生労働省が公表している、1年間の1人当たりの年齢別医療費、自己負担額、保険料です(令和2年度実績に基づく推計値)。横軸が年齢、縦軸が金額(万円)で、上に伸びている棒グラフが医療費、下に伸びている2色の棒グラフがそれぞれ保険料、自己負担額となっています。

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「年齢階級別1人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較(年額)」(令和2年度実績に基づく推計値)、厚生労働省のデータを基にフィデリティ証券が作成

病気やケガで医師の診察などを受けた際には医療費を支払います。ただし、病院の窓口で健康保険証を提示すれば医療費全額ではなく、3割(原則)の負担だけで済みます。その3割の部分が「自己負担額」の棒グラフ、10割の部分が「医療費」の棒グラフです。「保険料」は健康保険に加入していれば支払う健康保険料です。

このグラフを見ると、年齢を重ねるほど「医療費」の棒グラフは大きくなっています。つまり、医療費は増加しています。一方で自己負担額は、最も多い60歳代後半、90歳代前半でも年間8.3万円、月平均で7,000円程度にとどまっています。思ったほど多くない、という印象を持つ人も多いのではないでしょうか。

医療費の自己負担額がこれほど低いのはなぜ?

高齢者は現役世代と比べて収入が少ないため、支払う保険料もその分、少なくなります。ただし、医療費が増えているのであれば、窓口で支払う医療費の自己負担額も増えるはずです。高齢になっても自己負担額が大きく変わらないのはなぜでしょうか。

1.医療費の一部負担割合が年齢によって変わるから

1つ目の理由は、医療費の一部負担割合が年齢によって変わるためです。健康保険証があれば病院にかかった際に窓口で支払う自己負担額は原則、医療費の3割です。この割合は高齢になるに従って低下し、一般的な所得の場合は70〜74歳が2割、75歳以降は1割負担となります。

ただし、75歳以降で一定以上の所得(単身世帯で年金収入などの所得金額が単身世帯で200万円以上、複数世帯で320万円以上)がある場合は2割負担です。いずれにしても、現役世代と比べて医療費がかさむ一方で自己負担割合が低く抑えられているため、自己負担額が大きく変わらない仕組みとなっています。

2.高額療養費制度があるから

2つ目の理由は高額療養費制度です。公的医療保険制度では高額療養費制度という仕組みがあります。医療費がかさんだ場合は、以下の表のように1カ月の自己負担限度額が決められています(表は75歳以上の場合)。

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1カ月当たりの自己負担限度額(75歳以上)、厚生労働省の資料を基にフィデリティ証券が作成

例えば医療費の自己負担割合が1割の75歳以上で現役世代ほどの所得がない場合、病院に支払う自己負担額の上限は1カ月当たり1万8000円(外来)です。通院を重ねて何度も自己負担額の上限に達した場合でも、1年間の上限額は14万4000円と決まっており、それ以上の負担はありません。

現役世代の高額療養費制度は以下の記事をご参照ください。

民間保険・職場の福利厚生よりも公…

老後は、医療費とともに介護費に対する不安もあるでしょう。しかし、介護費が増えたとしても、1年間にかかった医療費と介護費の合計額に対して自己負担額以上の支払い分が払い戻される「高額介護合算療養費制度」もあります。老後の医療費や介護費について、過度に不安になる必要はないと言えます。

まとめ

ご紹介したデータはあくまで平均的な値であり、実際にかかる医療費は当然、平均値より多い人も、少ない人もいます。しかし、国の制度によって自己負担額が抑えられるため、医療費については過度に不安になる必要はないでしょう。

こうした公的な医療保障は自身で請求しなければ受け取れないため、制度や仕組みについて理解することはとても重要です。漠然とした不安をすべて民間の保険で備えようとする前に、ぜひ公的保険制度の仕組みやご自身の状況を一度確認しておくことをおすすめします。

保険は保険事故に該当したときにしかお金が受け取れませんが、見直した保険料分で資産形成を始めれば、使いみちが自由なお金を準備することも可能になります。お金を節約すると同時に、お金を増やすことも考えてみてください。

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