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民間保険・職場の福利厚生よりも公的保険が重要な理由とは?

フィデリティ証券

この記事のポイント

  • 公的保険によって医療費負担はそもそも大きく軽減されている
  • 公的保険には遺族の生活を支える「遺族年金」もある
  • 民間保険の加入は「最後の手段」。ムダなコストを減らして資産形成にも取り組もう

ある日突然やってくる病気やケガ、介護、死亡などのリスク。こうしたリスクに備えようと民間保険を検討する人は多いでしょう。あるいは、職場の福利厚生で役立ちそうなのはないか、勤め先の総務部門に尋ねた経験があるかもしれません。しかし、それよりも重要なのが「公的保険」です。その理由について、ご説明します。 

公的保険とは?

日本は国民皆保険、国民皆年金であり、原則として日本国民全員が公的医療保険(健康保険、国民健康保険など)と公的年金保険、公的介護保険(40歳以上)に加入しています。これらの保険には経済的負担を軽減する保障が備わっているため、万が一の場合にはまず公的保険でどの程度賄えそうなのか、確認することが重要です。

公的医療保険

健康保険や国民健康保険といった公的医療保険で最も利用頻度が高いのは、「療養の給付」でしょう。病気になり病院で診療を受けたり、薬を処方されたりした場合は、健康保険証を医療機関の窓口などで提示すれば実際にかかった医療費の一部(原則3割)の負担で済みます。

また、支払うべき医療費が高額になった場合は、自己負担限度額(上限額)を超えた部分があとから払い戻される「高額療養費制度」もあります。どの公的医療保険でも対象となります。民間の医療保険に加入していなくても、公的医療保険によって医療費負担はそもそも大きく軽減されているのです。

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高額療養費制度の仕組み、厚生労働省資料よりフィデリティ証券が作成

自己負担限度額は収入によって変わり、以下の計算式で算出します。同じ月に別の医療機関で治療を受けるなどした場合は、合算します。

年収(カッコ内は標準報酬月額) 1カ月あたりの自己負担限度額 医療費が100万円かかった場合の自己負担限度額
1160万円以上(83万円以上) 252,600円 +(医療費-842,000円)×1% 254,180円
770万~1160万円(53万~79万円) 167,400円 +(医療費-558,000円)×1% 171,820円
370万~770万円(28万~50万円) 80,100円 +(医療費-267,000円)×1% 87,430円
370万円以下(26万円以下) 57,600円 57,600円
住民税非課税者 35,400円 35,400円

収入(年収)別で見る医療費の自己負担限度額の計算式、69歳以下、年収は概数、厚生労働省資料より フィデリティ証券が作成

例えば、年収約370万~約770万円(標準報酬月額28万~50万円)の人が重い病気で治療を受けたとします。1カ月の医療費が100万円で窓口で3割(30万円)を支払った場合、以下の計算に基づき自己負担限度額は8万7430円となり、窓口で支払った金額との差額である21万2570円が高額療養費として払い戻されます。

高額療養費の計算式の例
8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円(自己負担限度額)
30万円―8万7430円=21万2570円(高額療養費として払い戻し)

高額療養費制度は、同じ公的医療保険に加入していれば、世帯全員分を合算できます。一人ひとりの医療費が少額でも家族の分を合算して自己負担限度額を超えれば、払い戻しが受けられます。重い病気で定期的に治療を受けている場合に自己負担限度額が下がる「多数回該当」という仕組みもあります。

また、健康保険(または公務員などが加入する共済組合)には、病気やケガで働けなくなったときに給与の3分の2程度が通算して最長1年6カ月にわたり支給される「傷病手当金」という制度もあります。

公的年金保険

公的年金保険には、家計を支える働き手に万が一のことがあった際に代わりに年金を受け取れる「遺族年金」という制度もあります。遺族年金は国民年金(基礎年金)と厚生年金の2階建てとなっており、一定の条件に該当した場合は国民年金で年79万5000円、厚生年金では亡くなった家族が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が受け取れます。

民間の生命保険は不要?公的年金…

このように、皆さんがすでに加入している公的医療保険や公的年金保険には、万が一の場合の経済的な負担を大きく軽減できる保障がすでに備わっています。まずは公的保険を十分に活用できるよう、理解を深めましょう。

職場の保障・福利厚生はプラスアルファで考えよう

皆さんの勤務先では、従業員向けにさまざまな保障・福利厚生サービスを提供しているかもしれません。企業そのものが提供していなくても、加入する健康保険組合、企業年金基金、共済会・福祉会、労働組合などが主体となってこうした仕組みを整えている場合もあります。

例えば、健康保険組合では独自の給付制度を取り入れている場合があります。高額療養費制度を利用する際の自己負担限度額が一律2万円や2万5000円となっていたり、傷病手当金に対して上乗せ給付があったりするなど、給付の種類はさまざまです。

さらには勤務先から死亡退職金や特別弔慰金、共済会等からは遺児育英年金などが支給される場合もあります。企業によってその内容は千差万別です。これらの給付はあまり認識されていないことも多いですが、1000万円を超える場合もあり、決して無視できる金額ではありません。

万が一の際の金銭的な負担は公的保険である程度カバーできるはずです。その上で、勤め先などが取り入れている制度がプラスアルファとして活用できるかどうか、目を通しておくと良いでしょう。

生命保険への加入など自助努力は最後の手段

公的保険や職場の福利厚生などを確認した上で、それでも備えが足りないと感じるときは民間の生命保険の活用などが考えられます。ただし、その場合でもまずは金融資産や不動産など、手元の資産がどのくらいあるのかを確認しましょう。手元の資産で十分カバーできる可能性があるためです。

また、住宅ローンを借りる際に団体信用生命保険(団信)に加入していれば、万が一の場合はローン返済が免除されます。この点も踏まえておかないと、必要以上に民間の生命保険に加入し、ムダなコストを支払う可能性があります。

こうした自助努力は最後の手段です。もし、どうしても民間の生命保険に加入する必要がある場合は、税制優遇の有無や職場での団体割引の有無などを確認して、できるだけ有利な商品を選択しましょう。

まとめ

公的保険、職場の保障・福利厚生、自助努力の優先度を示した図が以下となります。

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公的保険、職場の保障・福利厚生、自助努力それぞれの優先度のイメージ、フィデリティ証券が作成

リスクへの備えと言うと、一般的には民間の生命保険などを考える人が多いでしょう。しかし、万が一のことがあったとしても公的保険、もしくは公的保険と職場の保障・福利厚生では足りない分を補える資産があれば、必ずしもコストを負担してまで民間の生命保険などに加入する必要ありません。

まずは公的保険の仕組み・利用方法をしっかりと理解し、職場が取り入れている制度なども確認した上で、それでも不足していると感じた場合に民間保険への加入を検討するようにしましょう。

万が一のリスクへの備えはもちろんですが、「人生100年時代」では万が一のことが“起こらなかった場合”への備えも必要です。リスクに備えつつ、趣味や余暇などの人生の楽しみにも使えるお金を準備できるようにムダなコストを減らして資産形成をしておく、という選択肢も検討してみてください。

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