この記事のポイント
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「老後2000万円問題」が話題になりました。老後に備えた長期的な資産形成はとても大切ですが「少しハードルが高いかも…」と思ったら、まずは1000万円を目標にしましょう。長期的な資産形成という観点から貯蓄期間を30年に設定し、毎月いくら貯めれば1000万円を達成できるのか、どんな金融商品であれば貯まりやすいのか、ご紹介します。
30年で1000万円を貯めるには毎月いくら積み立てる?
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2022」によると、大学・大学院を卒業した就業者の生涯賃金は男性が2億6190万円、女性は2億1240万円(注)です。給料(やボーナス)の4〜5%と考えれば、1000万円の貯蓄は決して難しくないでしょう。
注:60歳で退職するまでフルタイムの正社員を続ける場合、退職金を含めない、2020年
具体的に毎月いくら積み立てれば1000万円を貯められるのでしょうか。長期的な資産形成を前提に、30歳前後から定年退職までの30年にわたり積み立てると約2万8000円となります。「絶対に無理!」というほどの金額ではないはずです。
計算式:
1000万円÷(30年×12カ月)=2万7778円(預貯金の金利を0%として計算)
利回り次第でこんなに変わる!資産運用で賢く増やそう
ライフイベントがあったり、ライフスタイルが変化したりすると、毎月2万〜3万円の積み立てが難しい場合もあります。貯蓄を優先して日々の生活に影響が出てしまうようでは、30年にもわたってお金を貯め続けることは難しいです。
そこで、もっと賢く増やす方法を考えてみましょう。お金に働いてもらい、利回りを得てお金を増やす「資産運用」の出番です。金利0%で預けたままの預貯金が毎年1%の利回りを生むだけで、1000万円到達までのハードルがぐっと下がります。
投資信託のような利回りが得られる金融商品を活用する前提で、利回りの水準によって毎月必要な積立額がどのぐらい変わるのか、シミュレーションします。結果は以下の通りです。
30年で1000万円を貯めるために必要な毎月の積立額(利回り別)、フィデリティ証券が作成
毎年3%の利回りで資産運用するのであれば、その金融商品への毎月の積立額は1万7118円となります。利回り0%と比べて、負担はずいぶん軽くなります。
別の角度からも見てみます。毎月の積立額を合計した金額が30年でいくらになり、資産運用の成果がどのぐらいなのか、シミュレーションします。
1000万円を貯めるために必要な30年間の合計積立額(利回り別)、フィデリティ証券が作成
30年で1000万円を貯める場合、利回り0%であれば積立額は1000万円です。お金が働かない分、自身がたくさんのお金を積み立てなければいけません。一方で利回り3%であれば、積み立てるべきお金は約616万円となります。残りの384万円は、お金が働いて増やしてくれます。
積み立てる必要がなくなったお金は交際費や住居費に充ててもよいでしょう。投資信託などを運用してお金に働いてもらえば、生活にゆとりを持たせつつ将来思い描くプランも実現できるのです。
1000万円達成のハードルをもっと下げる方法は?
30年で1000万円を貯める目標を前提にシミュレーションしました。ただし、「定年退職までに1000万円を貯める」というゴールに到達するための選択肢は、利回りだけではありません。「貯める期間(資産運用する期間)」も重要です。
資産運用で得られる利回り、運用する期間を分けて毎月の積立額をシミュレーションしたのが以下のグラフです。
1000万円を貯めるために必要な毎月の積立額(利回り別・運用期間別)、フィデリティ証券が作成
50歳から慌てて10年間で1000万円を準備するか、40年間かけてコツコツと資産運用を続けるかで積立額は大きく変わります。利回りが5%であれば、その差は10倍にまで広がります。これは、資産運用する期間が長くなるほど「複利効果」の影響が大きくなるためです。
キーワード:複利効果とは 複利効果とは長期的な資産運用で得られるメリットのことです。その年の利息や配当金などを次の年の投資に充てる(再投資する)ことで、増えた投資金額の分だけ前年よりも利息などが多くもらえます。「利息が利息を生む」イメージです。年を重ねるほど利息が積み重なり、運用するお金も増えるため「複利効果で雪だるま式に資産が増える」と表現することも多いです。どのぐらい増えるかは投資する金額(元本)、利回り、運用年数がわかっていれば、以下の計算式で確認できます。 計算式: |
複利効果のメリットを合計積立額からも見てみましょう。5%の利回りで40年にわたって資産運用を続ける場合、1000万円貯めるのに必要な積立額は約313万円です。一方、同じ利回りでも運用期間が10年だけであれば、積み立てるお金は770万円になります。
1000万円を貯めるために必要な積立額の合計(利回り別・運用期間別)、フィデリティ証券が作成
長期的な資産運用のメリットはほかにもあります。運用期間が短い場合は、その時々に起こるショックなどの影響で資産価値が大きく目減りする可能性が高くなります。一方、しっかりと分散投資していれば、期間が長くなるほど資産が目減りする確率は下がるとされています。
資産運用にあたっては、さまざまな観点から、長期的な視点で準備していくことがとても大切です。
長期投資の重要性について
具体的にはどんな商品を選べばよい?
低金利の時代に3〜5%の利回りを確保し続けられるのでしょうか。非現実的との声もありそうですが、必ずしもそうではありません。たとえば投資信託にはさまざまな種類があります。世界株式や世界債券で運用する投資信託であれば、達成不可能ではありません。こうした資産で運用する投資信託は多く、見つけるのは難しくないでしょう。
もちろん、どのぐらいの利回りを確保すべきかは、貯めたい金額や資産運用できる期間、取れるリスク(許容度)によって変わります。それによって、選ぶべき投資信託も変わります。
一般的にハイリスク・ハイリターンといわれる株式、ローリスク・ローリターンに位置付けられる債券など(で運用する投資信託)を組み合わせることで、目標を達成できる利回りに近づけられます。この組み合わせをアセットアロケーションといいます。詳しくは以下の記事をご確認ください。
期待リターンとリスクはアセットア…
まとめ
30年で1000万円を貯めるのは、決して難しくありません。もし自信がなければ40年貯め続けることを前提に、少額でも早いうちから始めてはいかがでしょうか。給料日に一定額を証券口座に自動で振り込むなど、仕組み化して資産運用を習慣にするのも手です。コツコツと積み立て続ければいずれ大きく育つはずです。ぜひ、挑戦してみてください。