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景気サイクル(景気循環)とは?資産運用への影響は?

フィデリティ証券

この記事のポイント

  • 景気サイクルは回復期から不況期まで4つのステージに分かれ、順番に訪れる
  • 「キチンサイクル」や「ジュグラーサイクル」など周期の異なる4つの景気サイクルがある
  • 好況期は「景気敏感株」、不況期は「ディフェンシブ株」が優位。ただし株価は先行して動く

景気には波があり、良い時(好景気)、悪い時(不景気)を繰り返して経済は成長します。この波を景気サイクル(景気循環)と呼びます。景気次第で恩恵を受けるアセットクラス(資産クラス、株式投資の場合は企業や業種=セクター)は変わるため、リターンを高めるには波をしっかりと踏まえた資産運用が重要です。

好況と不況を繰り返す景気サイクル

景気サイクルは回復期、好況期、後退期、不況期という4つのステージに分かれ、順番に訪れます。回復期や好況期は消費者がたくさんモノを買ったり、サービスを利用したりするようになり、企業の売り上げも増えます。企業の業績が良ければ、その企業の価値を表す株価は上がりやすくなります。

また、企業のビジネスが拡大すれば、オフィスの増床や魅力的な物件への移転のニーズも高まるでしょう。従業員の給料も上がり、商業施設に足を運んだり、マンションを買ったりする人も増えるかもしれません。そのため、回復期や好況期は株式、不動産(REIT、リート)といった、相対的に高リスクなアセットクラスへの投資に追い風となります。

後退期や不況期には消費者は財布のひもを締めがちで、企業の売り上げも減りやすくなります。ビジネスが低迷すれば不動産需要も停滞するため、高リスク資産には逆風となります。一方で投資マネーは低リスク資産に集まり、債券の中でも安全性が高いとされる先進国の国債などは値上がりしやすくなります(利回りは下がりやすくなります)。

これらの値動きをまとめたのが以下の表です。

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景気サイクルの4つのステージそれぞれでの各資産クラスの値動きのイメージ、フィデリティ証券が作成

景気サイクルの周期は大きく分けて4種類

回復期から不況期までの一連の景気サイクルは、どの程度の周期で繰り返すのでしょうか。景気サイクルにはいくつもの異なる周期(波)が存在し、重なり合っています。代表的な景気サイクルと周期を以下に示します。

景気サイクルの名称 周期 要因
キチンサイクル 3~4年 在庫変動
ジュグラーサイクル 約10年 設備投資
クズネッツサイクル 約20年 建設需要
コンドラチェフサイクル 50~60年 技術革新

景気サイクルの4つの周期と変動要因、フィデリティ証券が作成

最も短い周期はキチンサイクル(キチン循環、キチンの波)で、回復期から不況期までの4つのステージが3〜4年の周期で繰り返し訪れるとされています。「短期波動」などとも呼ばれます。この景気サイクルに大きく関係するのが、企業が抱える在庫の変動です。

好況期はモノが売れるため企業は積極的に生産して在庫を積み増し、売り上げを増やそうとします。企業の売り上げが増えれば、そこで働く従業員の給料が増え、いろいろなモノやサービスにお金を使うでしょう。それがさらに企業の売り上げアップにつながる好循環が生まれます。

しかし、いつまでも同じペースで売れ続けるわけではありません。どこかの時点で今度は売れ残りが目立ち始めます。売り上げが伸び悩み、過剰な在庫も抱えてしまった企業の従業員はボーナスや残業代が減り、消費を抑えるかもしれません。その結果、消費の減少と企業の売り上げダウンの悪循環が生まれます。これが不況の始まりです。

不況期もやがては終わりを迎えます。モノの値段がどんどん安くなれば「買ってみようかな」と考える人が増え、需要が回復します。モノが売れ始めれば企業の過剰在庫も少しずつ減り、在庫が足りなくなって再び生産を増やすでしょう。この在庫の変化による一連の景気変動がキチンサイクルです。

このほか、設備投資、建設需要、技術革新などを要因とした、より長期間に及ぶ景気サイクルもあります。これらのサイクルが組み合わさり、大きな景気変動につながるのです。

景気サイクルと株価の関係、株式のセクターローテーション

景気サイクルの変化には中央銀行の金融政策も大きく影響します。中央銀行は物価の安定などを目標に、景気が過熱したり、冷え込みすぎたりしないよう金融政策によって景気の大きな変動を抑えます。景気が悪い時には世の中にお金がまわるよう金融緩和をし、景気が良い時にはインフレが進みすぎないよう金融引き締めをします。

そのため、企業の売り上げや利益などを指す「企業業績」や株価の値動きの予測にあたっては、景気サイクルそのものの変化だけでなく、景気サイクルに影響を及ぼす金融政策の動きも踏まえる必要があります。株式市場では、金融政策の影響を重視して株価の変動を「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」という4つのステージで捉える考え方もあります。

また、それぞれのステージによって買われやすい業種(セクター)が移り変わることをセクターローテーションと呼んでいます。以下のグラフで示したそれぞれのステージを順を追って確認するとともに、それぞれの局面でどんな業種の株価が上がりやすいのか(どんなセクターローテーションが見られるのか)をご説明します。

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景気サイクルと株価、株式相場のステージの変化のイメージ、フィデリティ証券が作成

1.金融相場

「金融相場」とは金融政策が株価上昇のけん引役となったり、株価を下支えしたりする相場です。中央銀行が金融緩和をする不況期から回復期にかけてみられます。この時期の企業業績は決して良くないものの、金融緩和によって世の中にあふれた投資マネーが市場に向かうため、リスクを取りたい投資家が株式市場に資金を振り向けやすくなります。

金融緩和によって景気サイクルが不況期から回復期に向かうのを期待した株価上昇であり、こうした局面では、投資家は足元のさえない企業業績よりも、成長性を重視する傾向があります。そのため、成長ポテンシャルが大きいとされるIT関連や新興企業など「グロース株」が値上がりしやすくなります。

2.業績相場

景気サイクルが回復期から好況期に向かうと、消費が増えてビジネスも活発になります。最悪期を脱した企業は生産活動を加速したり、設備投資に前向きになったりするでしょう。活況なビジネスを背景にした企業業績の改善が株価上昇をけん引する相場を「業績相場」と呼びます。

業績相場では、モノやサービスの需要が景気変動の影響を大きく受ける業種が値上がりしやすくなります。不況期に落ち込んだ企業業績の大幅な回復が見込まれるためです。景気変動の影響を大きく受けるセクターとしては自動車や金融、半導体、不動産、鉄鋼、商社などが挙げられます。これらのセクターを「景気敏感セクター(景気敏感株)」と表現することもあります。

ただし、不景気時には一転して業績の悪化が見込まれるため、株価の伸びしろはグロース株ほど大きくないことが多いです。独自のビジネスモデルや商品開発力よりも景気変動が業績を大きく左右するような企業の株式を「バリュー株」と呼ぶこともあります。

3.逆金融相場

ビジネスが活発になれば、企業で働く人たちの給料が増え、消費意欲はどんどん高まります。生産が追いつかないほど需要が大きくなれば、モノの値段は上がりやすくなります(原材料価格や従業員の給料などコストの増加による値段の上昇もあります)。これがインフレです。

インフレが少しずつ進んでいれば、ゆっくりと順調に景気が拡大している1つの証拠でもあるので、問題はありません。しかし、景気が良くなりすぎて急ピッチでインフレが進むような、いわゆる「バブル」の状況は経済にとって好ましくないでしょう。その分、その後に訪れる不況期の「谷」が深くなるからです。

そのため、中央銀行は景気が過熱しないよう金融引き締めを実施して、過度なインフレの沈静化を図ります。金融引き締めによって景気の拡大ペースが鈍るなど、景気後退の兆候を理由に株式相場が反転するステージを「逆金融相場」と呼びます。

先々の景気後退と企業の業績悪化が見込まれる逆金融相場では、景気に敏感な企業の株価は下がりやすくなります。一方で電力・ガスや食品、日用品といった生活に欠かせないモノ・サービスを手掛ける企業は、景気後退期でも需要が大きく落ち込むリスクは相対的に低いと考えられるため、こうしたセクターに投資資金が向かいやすくなります。

4.逆業績相場

後退期が続くと、やがて不況期に突入します。売り上げが大きく落ち込めば、ボーナスのカットなどを通じて消費も落ち込むかもしれません。消費が落ち込めば、さらに企業の売り上げが減少します。この悪循環によって株価の下落が続くのが「逆業績相場」です。

こうした状況で相対的に株価の下落幅が小さいとされるのが、医薬品セクターなどです。ただし、一般的に電力・ガス、日用品、食品、医薬品などは景気動向に左右されにくい「ディフェンシブセクター(ディフェンシブ株)」に位置付けられ、ステージによって明確な線引きがあるわけではありません。「景気が悪化してくるとこういった業種の株価が相対的に上がりやすい」というイメージを持っておくだけで良いでしょう。

株価は先行して動く

実際には、株価はステージの変化に先行して動く傾向があります。投資家は6カ月先、1年先、2年先の企業業績の変化を予測し、投資判断するためです。そのため、消費者心理の変化を測る経済指標や生産活動に必要な設備投資の動向、事業拡大のための求人などさまざまなデータを調べ、投資機会につなげています。

株価に大きな動きが出始めたら、株式相場のステージの変化や景気サイクルの変化を見越した動きを反映しているかもしれません。注意して眺めてみましょう。

まとめ

景気は良い時もあれば、悪い時もあります。景気の良しあしでそれぞれの資産クラスのリターンは変わり、さらに株式の中でも、それぞれの企業の株価の値動きはセクターごとに変わります。高いリターンを獲得しようとするのであれば景気サイクルや金融政策、投資家の動向、それらを踏まえた株価や資産クラスの値動きを常にチェックし、最適な投資先を探し続けなければいけません。

一方で、どんな状況でも安定したリターンを獲得したいのであれば、株式や不動産(REIT、リート)、債券をバランスよく組み合わせたり、株式だけ保有している人でもセクターを分散させたりしてポートフォリオ全体の値動きを安定させることが大切です。また、「景気サイクルは繰り返す」という理解していれば、長期的な資産運用では必ずしも目の前の動向に一喜一憂する必要はないでしょう。ご自身の目標・目的に合うような投資方法、分析方法を探してみてください。

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