資産運用では、運用するお金をどんな金融資産(アセットクラス)に、どのくらいの割合で配分(アロケーション)するかを決める、「アセットアロケーション(資産配分)」がとても大切だと言われています。しかし、アセットアロケーションは一度決めて終わりではありません。アセットアロケーションを決めた後は、ライフスタイルの変化など適切なタイミングでアセットクラスへの配分割合を変更する「リアロケーション」も重要です。
今回は理想的なアセットアロケーションを決める際に考慮すべきポイントやリアロケーションのタイミングについて、ご説明します。
アセットアロケーションとは?
アセットアロケーションを決める際の主なポイント
理想的なアセットアロケーション(資産配分)を決める際に考慮すべきポイントは、以下の通りです。
ポイント | 説明 |
---|---|
年齢 | 一般的に、若い方が運用期間を長く取れるため、高いリターンを期待した(リスクも相応に高い)アセットアロケーションにすることが可能 |
現在の収入と支出 | 収支が黒字となっていれば、生活の安定感が高まるため、高いリターンを期待した(リスクも相応に高い)アセットアロケーションにすることが可能 |
資産状況 | 資産規模が大きくなるほど、運用のリスクが高まったとしても日々の生活に影響が出る可能性は低くなるため、高いリターンを期待した(リスクも相応に高い)アセットアロケーションにすることが可能 |
退職金の見込み額 | 定年退職時に退職一時金等が見込まれる場合、その金額相当分は安全資産が増加することが期待されるため、より高いリターンを期待した(リスクも相応に高い)アセットアロケーションにすることが可能 |
公的年金の見込み額と金融資産の取り崩し額 | 定年退職後の生活費として、公的年金で足りない分として、どのくらいの金額を取り崩していくかによって、リスクの取り方が変わる |
リスクに対する考え方 | リスクを取ることに積極的か、リスクを取ることに保守的か(リスク選好度)によっても適切なリスクの取り方が変わる |
アセットアロケーションを決める際の主なポイント(フィデリティ証券が作成)
一般的に資産運用の目的はお金をモノやサービスに交換する能力、すなわち購買力の維持・向上です。お金は人生のどこかのタイミングで使ってこそ意味がありますから、そのような意味ではライフサイクルを考慮することが大切です。
何歳まで働き、どのようなタイミングでどのくらいお金を使うか、ライフプランやマネープランは人それぞれですから、適切なアセットアロケーションも人それぞれということになります。一般的にアセットアロケーションを決める際には、先ほど挙げたポイントを考慮するのが良いと言われています。
基本的な考え方としては、資産運用を継続していく際に、一時的に含み損などの状況になったとしても日々の生活に影響が出ないかどうか、ということが大切になります。日々の生活に影響が出ないのであれば高いリターンを目指してリスクを取った運用が可能になりますし、影響が出るのであれば、より保守的な運用にしておくべきでしょう。
アセットアロケーションのシンプルな考え方、「100-年齢」を株式に
昔から言われているアセットアロケーションについての1つの考え方として、
「100-年齢」を株式(もしくはリスク資産)へ配分する
というものがあります。30歳の方であれば70%を、60歳の方であれば40%をそれぞれ高いリターンが期待できる株式などのリスク資産へ配分する考え方です。残りの部分は期待リターンが低いものの、安全性の高い債券や預貯金に振り向けます。
年齢は毎年1つずつ増えていきますが、アセットアロケーションを毎年1%ずつリアロケーションする必要はありません。5年もしくは10年ごとくらいに見直していく形で十分でしょう。人生100年時代ということもあり、「100-年齢」ではなく、「110-年齢」や「125-年齢」といった配分で考えるべきという声も出てきているようです。
ライフイベントの際にはリアロケーションを!
シンプルな考え方として「100-年齢」をご説明しました。しかし、人生にはまとまったお金が必要となるライフイベントもあります。リタイアやマイホーム購入、家族構成の変化などです。こういったタイミングでリアロケーションする考え方もあります。
リタイア(現役引退)時
最もわかりやすいのが、リタイア(現役引退)です。働くことで収入を得てきた現役時代から、一般的に公的年金が収入の柱になるセカンドライフへ入るタイミングでは、アセットアロケーションの見直し(リアロケーション)が必要だと思われます。
最近は定年退職後も再雇用や転職して働き続ける方が増えています。現役時代とセカンドライフの境目は明確ではなく、少しずつ移行していくイメージかもしれませんが、金融資産運用においては適切に見直しておくべきタイミングと言えます。
マイホーム購入時
住宅ローンを借りてマイホームを購入した場合にも、リアロケーションを検討すべきタイミングです。住宅ローンを借りることで、家計のバランスシートは一気に大きくなります。住宅ローンの返済が着実に実行できるよう、金融資産の中身についても見直しておくべきタイミングでしょう。
家族構成の変化や転職
結婚した、子供が生まれた、など家族構成が変化することで支出水準が変化した時や、転職などで収入が変化した場合もリアロケーションすべきタイミングと言えるのではないでしょうか。
資産運用の経験に応じて
最後に、資産運用の経験年数に応じてリアロケーションすることもあるでしょう。これはどのくらいリスクを取りたいかという、リスク選好度の変化ということになります。初めての時は保守的なアセットアロケーションで少しずつリスクを取っていったとしても、資産運用の経験が積み上がっていくにつれ、より高いリターンの期待できるアセットアロケーションへ変更していくことが考えられます。
まとめ
投資、資産運用と聞くと、どの銘柄をどんなタイミングで売買するかが大切だと思われている方もいるかもしれません。しかし、資産運用では、どんな金融資産(アセットクラス)にどのぐらいの割合で配分(アロケーション)するかを決める、アセットアロケーション(資産配分)が最も大切です。
そして、アセットアロケーションを決めた後は、ライフイベントや数年おきなど定期的に見直すリアロケーションが大切になります。ご自身の資産運用において、ぜひリアロケーションの考え方を取り入れてみていただければと思います。
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