資産形成において手軽に分散投資を実現できる金融商品として、投資信託(ファンド)があります。投資信託には大きく分けてアクティブ型のファンド(アクティブファンド)とインデックス型のファンド(インデックスファンド、パッシブファンド)の2種類があります。これらの特徴やメリット・デメリットについて、ご説明します。
インデックスファンド(パッシブファンド)とは?
インデックスファンド(パッシブファンド)は、日経平均株価やNYダウといった特定の指標(インデックス)をベンチマーク(基準)として定め、リターンがベンチマークに連動するよう運用する投資信託です。リターンを連動させるため、投資対象の銘柄は基本的にベンチマークの構成銘柄と同じになります。
インデックスファンドがベンチマークとする、各アセットクラスの代表的なインデックスとしては次のようなものがあります。
アセットクラス | 代表的なインデックス |
---|---|
日本株式 | 日経平均株価 TOPIX(東証株価指数) |
外国株式 | MSCI コクサイ MSCI エマージング・マーケット・インデックス NYダウ S&P 500 |
日本債券 | NOMURA-BPI 総合 |
外国債券 | FTSE世界国債インデックス(除く日本) |
日本REIT(不動産) | 東証REIT指数 |
外国REIT(不動産) | S&P先進国REITインデックス(除く日本) |
インデックスの代表例(フィデリティ証券が作成)
インデックスファンドのメリット
インデックスファンドのメリットは、信託報酬など運用にかかる手数料(コスト)を抑えつつ、手軽に幅広い銘柄に分散投資できることです。投資対象の銘柄は基本的にベンチマークと同じで、アナリストやエコノミストといったプロが分析して銘柄選別する必要がないため、信託報酬に含まれるリサーチ費用などが相対的に低めとなっています。一般的に売買頻度も少なく、取引費用も低い傾向があります。
インデックスファンドのデメリット
デメリットは、ベンチマークを上回るリターンが期待できないことです。また、投資対象は一般的に、ベンチマークの構成銘柄と同じになります。そのため、例えばSDGs、ESGといった観点から投資対象として適切ではなかったり、企業業績が悪くベンチマークのリターンを大きく押し下げていたりする銘柄にも、実質的に投資することになります。
アクティブファンドとは?
アクティブファンドは一般的に、日経平均株価やNYダウといった特定の指標(インデックス)をベンチマーク(基準)とし、ベンチマークを上回るリターンを目指す投資信託です。ベンチマークと比べて特定の銘柄や業種への資金の配分比率を高めたり、投資家に注目されていない銘柄に投資したりするなど、柔軟に運用します。企業分析に長けたアナリストやファンドマネージャーなどが有望な銘柄・業種を探し、こうした運用を実現しています。
アクティブファンドのメリット
アクティブファンドのメリットは、ベンチマークを上回るリターンが期待できることです。インデックスファンドと比べてユニークな商品も多く、特定のテーマや視点(例えばESGやAI、ヘルスケアなど)で銘柄を厳選し、集中的に投資するファンドもあります。
アクティブファンドのデメリット
デメリットは、相対的な運用コストの高さです。高いリターンが期待できる銘柄を探すためのリサーチ費用など、インデックスファンドと比べてコストがかさみがちです。それでも常に正しい銘柄選びができるわけではなく、リターンがベンチマークを下回ることもあります。アクティブファンドは数多くあり、優れたファンドをどのように選べばよいのか判断が難しいことも挙げられます。
これまでのポイントを表にまとめると、次のようになります。
インデックスファンド | アクティブファンド | |
---|---|---|
運用方針 | 特定の指標(インデックス)をベンチマーク(基準)と定め、それに連動するように運用 | 特定の指標(インデックス)をベンチマーク(基準)と定め、それを上回るリターンを目指して運用 |
パフォーマンス | ベンチマークと連動 | ベンチマークを上回ることもあれば、下回ることも |
手数料(コスト) | 比較的低め | 比較的高め |
メリット |
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デメリット |
|
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インデックスファンドとアクティブファンドのメリット・デメリット(フィデリティ証券が作成)
インデックスファンドとアクティブファンドはどちらを選ぶべきか?
インデックスファンド、アクティブファンドはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらかが一方的に優れているというわけではありません。
私たちの公的年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、インデックスとアクティブを組み合わせて運用しています。GPIFが公表した「2020年度 業務概況書」によると、2020年度末の時点でおよそ186兆円ある運用資産のうち、8割強はパッシブ(インデックス)運用、2割弱がアクティブ運用となっています。
時価総額 | 構成割合(%) | |
---|---|---|
運用資産合計 | 186兆1624億円 | 100.00 |
パッシブ運用 | 153兆9445億円 | 82.69 |
アクティブ運用 | 30兆6176億円 | 16.45 |
その他 | 1兆6003億円 | 0.86 |
年金積立金管理運用独立行政法人「2020年度 業務概況書」よりフィデリティ証券が作成
2020年度末時点の運用資産をアセットクラス別に細かく見たのが以下のグラフで、各アセットクラスに占めるパッシブ運用、アクティブ運用の割合を示しています。これを見ると、株式でのパッシブ運用の比率が高く、債券は株式と比べてアクティブ運用の比率が高くなっています。
詳しくはコア・サテライト戦略のすすめでご紹介していますが、GPIFの運用スタイルは、コアとしてパッシブ、サテライトとしてアクティブといったイメージで運用されていることが確認できます。
ご自身の資産形成の目的やスタンスなども考慮しながら、インデックスファンドとアクティブファンドをうまく活用していただければと思います。