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老後の介護費の自己負担額は平均でどのぐらい?具体例でチェックしよう

フィデリティ証券

この記事のポイント

  • 介護が本格的に必要になるのは80歳前後から
  • 介護に必要な自己負担額は平均で約581万円
  • 経済的負担を不安視する声は多く、早めの準備が大切

年齢を重ねるにつれ、多くの人は日常生活での支援が必要になるでしょう。自身への介護がずっと先の話でも、その前にご両親の介護が必要になるかもしれません。体力的な負担はもちろん大きいですが、お金の面での負担はどのぐらいなのでしょうか。老後の介護費の平均的な自己負担額を確認します。

介護が本格的に必要になるのは何歳から?

公的な介護保険サービスを受けるにあたり、現在住んでいる市区町村から「介護が必要である」という要介護認定を受けます。認定は日常生活の一部のみ手助けが要る「要支援1」から日常生活のすべてで介助が必要な「要介護5」まで、7段階に分かれています。

実際にこういった状態になるのは、何歳ぐらいからなのでしょうか。以下のグラフではその世代の人口に対する、「要支援1」から「要介護5」までのいずれかに認定されている人の割合を示しています。

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介護保険事業状況報告(令和2年度、厚生労働省)、人口推計(2021年3月1日時点、総務省)をもとに
フィデリティ証券が作成

加齢にともない要支援・要介護の認定を受ける人は増えます。70代後半では8人に1人、80代前半では4人に1人、80代後半では2人に1人となるため、80歳前後が1つの目安になるでしょう。

介護が必要になる理由は?

厚生労働省の「国民生活基礎調査」(令和元年)によると、介護が必要になった主な理由は、要支援者は関節疾患(18.9%)、高齢による衰弱(16.1%)、骨折・転倒(14.2%)でした。要介護者は認知症(24.3%)、脳血管疾患(脳卒中、19.2%)、骨折・転倒(12.0%)となっています。

要支援者、要介護者をすべて合わせると認知症(17.6%)、脳血管疾患(脳卒中、16.1%)、高齢による衰弱(12.8%)となっています。高齢による衰弱や認知症など少しずつ進行するものがある一方で、骨折・転倒など予想できない事故によってある日突然介護が必要になることもあります。

介護にかかる費用と期間はどのぐらい?

人生100年時代、誰もが支援や介護を受けながら生活していく可能性があります。介護に必要な費用などについても、大まかなイメージを持っておくことが大切です。

公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2021年度)によると、住宅のリフォームや介護用ベッドの購入といった一時的な費用は平均74万円でした。要介護5が107万円、次いで要支援1が101万円と、費用の大きさと要介護度の高さは必ずしも比例していません。

また、公的な介護保険サービスを利用した際の自己負担分を含む介護費用は、平均で月8.3万円でした。介護期間は平均61.1カ月(5年1カ月)となっています。このデータをもとに介護費用の総額を計算すると、以下となります。

介護に必要な費用=一時的な費用+毎月の費用×介護期間
        =74万円+8.3万円×61.1カ月
        =約581万円

実際の状況は人それぞれですが、ある程度まとまったお金を準備しておく必要はあるでしょう。

要介護3の男性の具体的な介護費用

もう少し具体的に費用を確認しましょう。66歳の男性が脳梗塞で倒れて右半身のまひと軽度の言語障害が残り、「要介護3」と認定されたと想定します。自宅で妻の介護を受けながら在宅サービスを利用する場合、負担する介護費用はどのぐらいでしょうか。

(この例は、公益財団法人生命保険文化センターのホームページ「ひと目でわかる生活設計情報」より一部引用し、作成しています)

公的介護保険サービスには、在宅サービスや施設サービスなどがあります。どこでサービスを受けるかによって内容や費用が異なります。サービス利用者は、基本的に所得に応じてかかった費用の1~3割を負担します。

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要介護3と認定された66歳男性の介護費用の例、公益財団法人生命保険文化センターのホームページ「ひと目でわかる生活設計情報」を一部引用し、フィデリティ証券が作成

男性は訪問介護(ホームヘルパーによる介護)を月9回、デイケア(通所リハビリテーション)を月13回利用しました。このほか、ショートステイ(短期入所生活介護)、訪問看護(看護師による診療補助、療養上の世話)なども利用し、1カ月の合計金額は①28万5880円でした。

介護保険からの支給額は、要介護度によって上限が変わります。要介護3の場合は②27万480円で、この金額を超過した③1万5400円が自己負担額となります。また、支給限度額の範囲内でのサービス利用は一般的には1割の自己負担となり、③とは別に②の1割である④2万7048円も支払います。

このほか、公的介護保険の対象にならない食費など⑤1万7150円も負担します。これらを合計すると、⑥1カ月の合計自己負担額は以下となります。

⑥合計自己負担額=③支給限度額超過分のサービス利用(10割負担)+④支給限度額内のサービス利用(1割負担)+⑤介護保険対象外のサービス利用(全額自己負担)
        =1万5400円+2万7048円+1万7150円
        =5万9598円

介護が必要になった当初は、自宅をリフォームするための初期費用が必要になることが多いです。この男性の場合は特定福祉用具(ポータブルトイレ)の購入と住宅改修(段差の解消)で⑦20万円かかっています。この費用も一般的には1割負担となり、自己負担額として⑧2万円を支払います。

まとめ

公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和4年度)によると、親などを介護する場合の不安として、回答者の65.7%が「自分の肉体的・精神的負担」と答えています。「自分の時間が拘束される」(54.4%)、「自分の経済的負担」(49.5%)といった回答も目立ちました。

介護者の負担は、介護を受ける人の状況や環境などによってさまざまです。しかし、平均で600万円近いお金をすぐに準備できる人は、そう多くはないでしょう。だからこそ、その日に向けて計画的に準備する必要があります。介護保険や介護そのものへの理解を深めると同時に、将来に向けた資産形成にもぜひ取り組んでください。

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